100円ショップだけでラジオの部品を揃える

傘ラジオなら、秋葉原に行かなくても、100円ショップだけで材料が揃います。

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傘ラジオは、できるだけ日用品を使ってラジオを作ろうということで2000年の春から始めたものです。(その経緯は旧HP内に記しています) 傘ラジオの第1作目は失敗、第2作目で現在の傘ラジオの原型ができ、第3作目はイヤホン以外はすべて日用品で作ったたわしダイオードラジオです。傘ラジオを考案した年から、「できるだけ日用品」及び「一部に電子部品を用いて作りやすく」の2本立ての路線が出来上がりました。でも最近は「できるだけ日用品」路線は少しサボり気味だったのです。

ここ数年、様々なメディアで傘ラジオが取り上げられ、ホームページを見て傘ラジオを作る人も増えてきたようで、質問の電子メールを受けることも多くなってきました。ラジオを作ったことが無い人が挑戦してくれているケースも多く、大変嬉しく感じました。

傘ラジオに興味を持たれた方の中には、「できるだけ日用品」路線に挑戦している方が結構いらっしゃるようなので、情報を追加することにしました。多くの方が参考にされているのは、旧HP内の「メロディカード検波ラジオ」だと思います。これは日本テレビの「ザ!鉄腕!DASH!!」でも取り上げていただきましたが、結構ハードルの高い工作になっています。

今回紹介するのは、電線代わりのアルミテープ部分の変更が中心ですが、その他の部分にも細かい改良を施しました。


材料


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ビニール電線とホイルペーパーの代わりにこのアルミテープを使います。この写真のものはダイソーで購入しました。

このアルミテープはアルミ箔の片面に粘着剤が塗布されたものです。アルミテープといっても色々な種類があり、値段もまちまちです。気をつけていただきたいのは、装飾用のアルミテープです。これらのものはアルミを蒸着しただけで導電性が悪く使い物になりません。傘ラジオに使うにはアルミ箔であることが必要です。

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厚手のビニール袋を用意します。

チャック付きである必要はありませんが、チャック付きのものに厚手のものが多いようです。 厚みは0.04mmくらいあればOKです。

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9cm × 8cm のクラフトペーパーです。

これは、傘ラジオの同調範囲を広げるために用います。

材質はクラフトペーパーでなければいけないというわけではなく、クラフトペーパーくらいの厚みがほしいだけです。画用紙などでもかまいません。薄い紙しかなければ、幅を長くすればよいのです。

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これらはイヤホンの材料です。

ダイソーで見つけた鉛筆キャップは先端に穴が開いていてイヤホン作りに丁度良かったのですが、もし他の鉛筆キャップを使うのでしたら、キャップの先端に穴が開いているかを確認してください。もし塞がっている様であれば、自分で開ける必要があります。

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ダイソーで購入したソーラー電卓です。

太陽電池とボタン電池を切り替えるためにショットキーバリアダイオードが使われていますので、それを取り出して使うことにします。ボタン電池が使えなくなりますが、太陽電池のほうは生きてますから、明るければ電卓として使えます。


傘ループアンテナの製作


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アルミテープから次のものを作ります

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アルミテープの片側は粘着剤が塗布されていて剥離紙が付いています。その剥離紙に、上記の部分を切り出すための印をつけておきましょう。

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上で紹介したアルミテープは幅40mm、長さ8mです。ここからホイルペーパーに相当する部分(アルミテープA)とイヤホンのリード線の部分(アルミテープC,D)を取り除いても、ビニール電線相当の部分(アルミテープB)に26m(6.5m × 4)を確保することができます。左図の実線部分を切断します。点線部分は折り曲げるところです。(粘着面側で谷折)

この例では、ビニール電線相当のアルミテープBの幅は1cmとなります。この幅については、幅5mmのものと比較測定を行っていますが、幅が大きいほうが、アンテナコイルのインピーダンスに含まれる高周波抵抗が下がることを確認しています。その反面、導体の面積が増えるために、コイルの浮遊容量も増えてしまい、自己共振周波数が下がってしまいます。中波放送の高めの局を受信する場合は、幅5mmくらいにするほうが無難かもしれません。

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アルミテープをはさみで丁寧に切っていきます。

このタイプの傘ラジオは、この作業が一番大変で、実際にやってみると想像以上に時間がかかります。

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アルミテープの各ブロック(A,B,C,D)は、電線や電極の代わりに使うものですから、途中で切らずにつながった状態で切り出してください。

折り返しの部分はつながった状態のまま、折り畳んで、一本のテープとなるようにします。

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切り出したアルミテープのうちテープBの両端とテープC,Dの片端は、粘着面がむき出しだと後の配線で扱いにくくなりますから、粘着面で谷折にして、テープの両面がアルミとなるようにします。

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ぐしゃぐしゃのままだと、次の工程で切れてしまうかもしれませんから、このようにアルミテープが巻いてあった筒に巻き直しておきます。

これでやっと傘に巻く準備ができました。

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まず、傘に巻く位置の印をつけておきます。

今回は、アルミテープの幅が1cmありますので、2cm毎に印をつけました。

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巻き始めの部分です。

アルミテープBは、傘の中心部から裏側を通って傘の外側まで貼り付けて、そこで表側に返します。そして、傘の表側で巻いていきます。

アルミテープはビニール電線と違って導体がむき出しですから、表側で巻く必要があります。裏側で巻くと傘の骨に接触してショートしてしまいます。

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巻く作業は、アルミテープに粘着剤が付いているので、ビニール電線よりも楽です。

傘の骨の位置では、角度をつけて曲げなければいけません。また、傘を畳んだりしたときに、この部分に力が加わるので、アルミテープを曲げるときは、少したるませておいてください。

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巻き終わりの状態です。

巻き終わり位置から傘の中心部までアルミテープを貼り、中心付近のビニールに穴を開け、アルミテープを傘の内側に引き込みます。

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傘の内側に引き込んだアルミテープの端は、傘の軸に巻きつけ、目玉クリップや洗濯ばさみで留めておきます。

これで、アルミテープによる傘ループアンテナが完成しました。


バリコンの製作


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アルミテープのうち、ホイルペーパーの代用として切り出した部分(アルミテープA)は、剥離紙を取って粘着面にビニール袋を貼り付けます。

ビニール袋はアルミテープAの外形よりも5mmほど大きくしてください。実際はもっと大きめのものを貼り付けておき、後で形を整えればよいでしょう。

アルミテープAの細い側はビニールからはみ出ても構いません。ここは接続用に使う部分なので、粘着面が内側になるようアルミテープを折り返しておく必要があります。

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傘の軸にクラフトペーパーを巻きつけ、洗濯ばさみで仮止めします。

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クラフトペーパーの上から、先ほど作ったビニール袋つきのアルミテープAを巻きつけていきます。

仮止めしていた洗濯ばさみでアルミテープAを挟んでから、巻きつけてください。ビニール側が内側、アルミが外側です。巻き始めを斜めにし、らせん状に巻きつけ、巻き終わり部分が傘の下の留め金付近に来るようにしてください。そのようにできない場合は、巻き始めのアルミテープの角度を変えて何度か試してください。

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アルミテープAの巻き終わり部分は、このように洗濯ばさみで挟んでおきます

これでバリコンの部分が完成しました。

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ループアンテナのアルミテープBの巻き始め部分を、クラフトペーパー部分のアルミテープAの上に巻いて接触させ、洗濯ばさみで挟み直します。

これで、ループアンテナによるコイルとバリコンが接続され、同調回路が形成されました。

この状態は、まだラジオになっていませんが、実はこれだけでも利用価値があります。普通のラジオの外部アンテナとして使えるのです。電波が弱くラジオがよく聞こえないような場合は、そのラジオの傍にこの状態の傘を置いて、傘の同調を取ると良く聞こえるようになります。ラジオにつながなくて、傍に置くだけで十分効果があります。是非一度お試しください。


イヤホンの製作


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ここで紹介する方法は既に紹介している次の方法を少しだけ変えたものです。これらも参考にしていただければ幸いです。

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ダイソーのメロディカードからセラミック振動子を取り出します。

このときリード線はできるだけ長く確保してください。

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ペットボトルキャップにはめ込みます。

ペットボトルキャップにはリード線を出すための切り込みを入れておく必要があります。 また、この他にも何箇所か切り込みを入れておくと、キャップが広がりやすくなって取り付けが楽になります。

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アルミテープC,Dにはそれぞれセロテープを貼り付け、両端を除いてアルミの部分を覆ってしまいます。

このようにして絶縁したテープを2枚重ねて更にセロテープで覆ってしまいます。

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アルミテープC,Dの片端には粘着面を残してありますから、このようにペットボトルキャップに貼り付けましょう。

セロテープの被覆は、この写真ではキャップの中央くらいまで来ています。その先がアルミテープの粘着剤で張り付いているところです。

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アルミテープがペットボトルキャップの側面まで来たところで、アルミテープを折り曲げ粘着面同士を張り合わせてしまいます。 その上で、このように、セラミック振動子の導線をアルミテープに巻きつけます。

導線とアルミテープの接触が多くなるよう、セラミック振動子のリード線は長めに被覆を剥いて、中の導線をむき出しにしてください。

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今回のイヤホンの作り方で、最も大きな変更点はここです。

セラミック振動子とアルミテープの接触をより確実にするため。結束バンドで強く締め付けます。 勢い余って、アルミテープを切ってしまわないよう、十分注意してください。

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カッターナイフの刃をライターで熱してプラスチック製鉛筆キャップを適当な長さに切断します。切断面を後で溶かしますので少し長めにしておきましょう。

この作業を行うと刃がライターのすすや溶けたプラスチックで汚れてしまいますから、錆びていたり、もともと汚れていたカッターナイフの刃を取っておいて、それを使うと良いでしょう。火の扱いや火傷には十分気をつけてください

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鉛筆キャップの切り口部分をライターの火に近づけて溶かします。

この作業も火の扱いには十分気をつけてください。キャップに火が移っても急に燃え広がることはありませんから、慌てず消してください。手を離してしまうと他のものに火が移る可能性があり、かえって危険です。近くに水を入れたコップなどを用意して作業しましょう。

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溶けた部分を素早くセラミック振動子に押し付けます。

この状態で、ある程度の接着にはなっているのですが、強度が無い様であれば接着剤を使ってください。 接着するもの同士の素材が違うので適した接着剤がないのですが、手っ取り早いのは瞬間接着剤です。

もしグルーガン(ホットメルト)をお持ちなら、これを用いるのがベストです。

グルーガンを持っていなくても裏技があります。セラミック振動子を外した後に残ったメロディカードの基板とスイッチをご覧ください。ここにグルーガンが使われていますので、この樹脂の部分をカッターナイフで削り取り、鉛筆キャップの切り口につけてライターで熱します。樹脂が溶けたら上と同じ方法で組み立てます。

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これでイヤホンが完成しました。

正しくできたかを確認しましょう。イヤホンを耳にあて、アルミテープのリード線の先をショートさせてみます。 このときカチッと音がすれば、正しくできています。何も聞こえない場合は、セラミック振動子のリード線とアルミテープの間の接触不良、あるいはアルミテープ同士のショートが疑われます。慎重に見直してください。


ショットキーバリアダイオードの取得


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ダイソーのソーラー電卓からショットキーバリアダイオードを取り出します。

既に旧HPでも紹介した方法ですが、このダイオードをゲルマニウムダイオードの代わりに使います。 電卓の電源部に使われているくらいですから検波用であるはずもなく、ゲルマニウムダイオードに比べるとやや音が小さくなります。 同調周波数が低めにずれ、選択度もやや落ちるようなので、接合部容量が大きいのでしょう。 それでも、秋葉原に行かずラジオ作りを楽しむという主旨においては十分使えると考えています。

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精密ドライバ(+)でビスを外し、蓋を開けます。

ダイオードがつながっている2箇所の配線を切断します。このときリード線を長く確保するように気をつけてください。

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蓋を閉め元に戻します。太陽電池が生きているので電卓として使えます。

ボタン電池への配線は切断してしまいましたので、ボタン電池は外して別利用を考えましょう。

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これはダイソーの他のタイプのソーラー電卓です。 同じようにダイオードを取り外すことができます。

これで必要な部品がすべて揃いました。


組み立て


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電卓から取り外したショットキーバリアダイオードにはビニール電線が付いていますから、この先端の被覆を剥いておきます。

そして、直接、傘の軸にアルミテープBを留めた目玉クリップのところに挟みます。

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イヤホンのリード線代わりのアルミテープのうち片方の先端を折り曲げ、ダイオードの先を挟み込みます。

外れないように上から洗濯ばさみで挟みます

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洗濯ばさみがブラブラするのを避けるため、このように傘の軸を跨いで挟むのがよいでしょう。

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クラフトペーパー、アルミテープA、アルミテープBを挟み込んでいる洗濯ばさみの部分に、更に、イヤホンのまだ接続していない方のアルミテープを重ね、洗濯ばさみで挟み直します。

アルミテープ同士が近いので、それらが互いにショートしないように目玉クリップや洗濯ばさみの角度を調節してください。また、アルミテープの余計な部分を切断したり、適宜セロテープを巻いて、接触してもショートしないよう仕上げてください。

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これで100円ショップで材料を集めた傘ラジオが完成しました。

聞き方は普通の傘ラジオと同じです。細かいことを言えば、少し受信周波数が低めにずれる傾向があります。また、ループアンテナの持つ自己共振周波数が中波ラジオの上限に近づくので、高い周波数に合わせにくい傾向があります。もし、お住まいの地域が1000kHz以上の局が主であるなら、巻き数を減らしたり、クラフトペーパーをもっと厚く巻くなどの対策を施してください。


組み立て(別の方法)


ここでは、アルミテープBを傘の軸に留めるところに、上の例のような目玉クリップではなく、洗濯ばさみを使った場合を説明します。

洗濯ばさみは挟みつける力と面積が目玉クリップより弱いので、この場所には目玉クリップのほうが適しているのですが、材料の種類を増やしたくない場合は洗濯ばさみでも十分使えます。

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洗濯ばさみのつまみの部分を、イヤホンの線(アルミテープ)とダイオードの接続に使えるのが利点です。

まず、洗濯ばさみのつまみの部分に、イヤホンから来たアルミテープの一方を引っ掛けます。

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そこにダイオードの先を当て、別の洗濯ばさみで挟み込みます。

イヤホンのもう一方のアルミテープの留め方は変わりありません。(この写真では既につながっている)

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完成するとこのような感じです。


分解と再組み立て


(pdfファイル)


分解は、洗濯ばさみを外して、傘(ループアンテナ)、ダイオード、イヤホン、クラフトペーパーを分離するだけです。ダイオードはなくさないように、リード線の部分を洗濯ばさみで挟んでおきましょう。

保管の際、ビニール袋に入れたいところですが、普通の傘袋には収まりません。 ポスター用として売られているビニール袋があるので、それが適しています。


再び組み立てるには上と逆のことをすればよいのですが、きっとすぐには思い出せないでしょう。そこで、この部分はpdfファイルにしておきました。これを印刷して一緒に入れておいてください。


傘ラジオは簡単な構造ですが、「簡単」だからといって「いい加減」でいいというわけではありません。一箇所でも間違いがあれば全く聞こえません。電波が強いところでは小さく聞こえるような間違い方もありますが、正しく作ったものとは雲泥の差があります。

正しくできていないことに気づかず、「まぁ日用品だからこんなものか」と思われているケースが多いように感じています。いろいろなところでデモンストレーションをしていますが、ゲルマラジオを作った経験のある方ほど「こんなに聞こえるんですか?」と驚かれます。電波の弱いところではもちろんダメですが、ゲルマラジオが聞こえるところで傘ラジオが聞こえないということは絶対ありません。

作ってみたけど鳴らない場合はご遠慮なく下記メールアドレスまでご連絡ください。