ロウソクで聞くLED検波ラジオ

リモコンの赤外線LEDを検波に使う

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赤外線LED検波ラジオ(クリックで拡大)

LED部分のセッティング(クリックで拡大)

LED検波ラジオを再度紹介しようと思ったきっかけは、今回の東日本大震災です。傘ラジオは既に日本テレビの「ザ!鉄腕!DASH!! 茂子の節約家族・地震対策編」(2005年10月30日)というコーナーで防災グッズとして紹介されています。このときは収録に立会い、エンドロールに東京高専の名前も流れました。また、東京高専のイベントでは「いざというときのエレクトロニクス」と銘打って実施することもあります。

そうは言っても、傘ラジオが聞こえるところは、電波の強いところに限られますし、音も小さいですから、被災したときに使えるかというと非常に難しいものがあります。真っ暗な中で作れるかということについては目隠しして傘ラジオを製作という試みもありますが、これも一般的な話ではありません。

ですが、条件が整ったところでは傘ラジオは使えます。それを実感したのが輪番停電です。停電のときにニュースを聞いたりするのに使っています。電池も品薄という状況なので、電池を使うラジオは余震が起きたときに備えて温存しておきたいからです。

はっきり分かったことは、傘ラジオは少なくとも東京の輪番停電には十分使えます。夜に輪番停電があると車の通行も少なくなり町は静かになります。こんなときにはうってつけです。ローソクの炎がゆれるとフェージングのように音の大きさが変化しますが、ローソクの炎のゆれは1/fゆらぎで、癒し効果があると言われていますから、そうした効果があればいいのですが・・・。

傘ラジオは「日用品でラジオを作ろう」と銘打っていて、実際にそのような実験も行っています。ところが科学教室で作るとなるといろいろ手間が掛かるため、電線、ゲルマニウムダイオード、クリスタルイヤホンの3点は電子部品として売られているものを使っているのが現状です。この内ゲルマニウムダイオードとクリスタルイヤホンはどこにでも売っているわけではなく、ラジオ関係の電子部品を扱う専門店にしかありません。

日用品で作る試みのほうは半田付けをしない想定ですが、そこまで極端にする必要は無いのではないかと考えました。「半田付けの道具は地元のホームセンターで入手できるがゲルマニウムダイオードは入手できない」、というくらいの想定もあっていいのではないかと思いました。通信販売という手があるのですが、今回の東日本大震災では物流が滞っていていざというときには使えません。道具はあるが手っ取り早く作りたいということもあるのではないかと思いました。それがLED検波に再注目した理由です。(2011年3月27日)


赤外線LEDならあるのでは?


使わなくなったリモコン(クリックで拡大)

LED検波に用いるLEDは赤外線LEDでもOKです。赤外線LEDですと、赤外線が多く含まれるローソクの炎と相性もいいですし、発想を転換すれば容易に入手できると思われます。

皆さんのお宅に、本体だけ捨てられて取り残されたリモコンはありませんか?今は様々な機器にリモコンが付属しています。これらには赤外線LEDが使われています。写真の例は、本体を廃棄してしまったCDラジカセのリモコンと引越しのときにエアコンを買い替え、その結果残ってしまったリモコンです。電池が液漏れしてリモコンを使わなくなったようなケースもあるのではないでしょうか。

リモコンからLEDを取り出す(クリックで拡大)

使わなくなったリモコンを分解して、中から赤外線LEDを取り出しましょう。

キャンドルホルダーにセット(クリックで拡大)

ダイソーで購入したガラスキャンドルホルダー(ロウソク台)に、リモコンから取り出した赤外線LEDをセットします。ワニグチクリップ代わりに使っているのはダイソーで購入したアルミピンチ(洗濯ばさみ)です。接触部分が広く取れるのでLEDの位置合わせが楽になります。

OSIR5113A(クリックで拡大)

秋月電子通商で購入した赤外線LEDのOSIR5113A(φ5mm、940nm、22mW/sr、100個入\700)をセットしてみました。リード線を曲げてからアルミピンチで挟みます。角度と高さを調整してローソクの炎の光がうまくLEDに取り込まれるようにします。

なおラジオとしての特性は他の色のLED検波と同様、用いるLEDによって差があります。光を当てたときの発電量も異なりますし、チップサイズが大きいものはダイオードに並列に静電容量が入ったように見えますから、同調範囲が低い方にずれます。この容量が曲者で、あまり大きいと検波を阻害しあまり良く聞こえません。

赤外線LED検波ラジオ1(クリックで拡大) 赤外線LED検波ラジオ1回路図(クリックで拡大)

傘ラジオにセットしたところです。ご家庭で実験する場合、

ロウソクの火が傘やイヤホンのコードなど他の物に燃え移らないようくれぐれもご注意ください

。実験はあくまでも自己責任でお願いします。広いところに置いて使うか、シェード(ランプの笠)をつけて他のものが炎に触れないようにする、あるいはランタンのような構造にして光だけ受けられるようにするなど、工夫が必要です。

赤外線LED検波ラジオ2(クリックで拡大) 赤外線LED検波ラジオ2回路図(クリックで拡大)

イヤホンを2個直列にしてみました。このほうが良く聞こえます。


LED検波ラジオの経緯


LEDに光を当てて検波器にする方法は、2007年から「昼間限定:電池の要らないラジオ LED検波ラジオ」で公開してきました。順方向電圧の高いダイオードでもバイアスを加えることでゲルマニウムダイオードの代用とする方法が知られていますが、この実験を行っている最中に思いついたものです。

このときのバイアスを加える実験は、様々なダイオードやトランジスタのPN接合部、更にはOP-AmpなどのアナログICやCMOSディジタルIC、PICマイコンの端子にあるサージ保護用のダイオード部分まで、いろいろなものを試しました。こうした結果も公開したかったのですが、LED検波を見つけてからはすっかりそちらに興味が移ってしまいました。LED検波ラジオの動作上の特徴は次の3点です。

個人的には半導体の性質や回路の働きを考える上でとても面白い教材だと思っていて、とても気に入っているのですが、残念ながらあまり反響はありませんでした。唯一、追実験をしてくださったのが「ブレッドボードラジオ」で有名なbbradio様で、「バイアス電源付きゲルマラジオ」の中にその様子が記されています。取り上げていただいたことに心より感謝している次第です。

初代赤外線LED検波ラジオ(クリックで拡大)


2007年のLED検波の実験では、様々な色のLEDを実験していてこの中に赤外線LEDもありました。

フォトトラ検波ラジオ(クリックで拡大)


このときの実験では、フォトダイオードとフォトトランジスタも確認しています。この内フォトトランジスタは動作原理が異なります。光がベース電流の代わりとなってコレクタ−エミッタ間に電流が流れる状態になります。このときのVce対Ic特性の立上りが急峻なため検波に利用できるのです。これはまた別の機会に紹介したいと思います。