メロディカード用ICの入力保護ダイオードを検波に使う


メロディカードに用いられているIC(中身は不明)の入力保護ダイオードを検波に使う方法を紹介します。


既に紹介した「メロディカードのセラミック振動子を取り出して傘ラジオのイヤホン代わりに使う」では、セラミック発音体以外の部分に使い道がなく、もったいないなと感じていました。


メロディカードの本体はボタン電池(LR130)が載った小さな基板です。ここにはベアチップICがCOB実装されています。そのICチップと各部の接続を調べてみると左図のようになっています。


ICの中身はわかりませんが、CMOSのロジックICであることは推察されます。とすれば、入出力には左図のような保護ダイオードが入っていることは間違いないでしょう。
特にスイッチにつながる端子は入力ですから、ここのダイオードはうまく利用できそうです。


そこで、「家庭のTVで整流特性を観測」で紹介した、V−Iカーブトレーサを用いて、スイッチ接続端子間の電圧−電流特性を調べてみました。

結果は予想通り、ダイオードの特性が現れました。ただし、汎用ダイオード並に順方向電圧が0.8V程度あります。


通常ゲルマラジオには順方向電圧の低いダイオードを用います。
これに該当するのはゲルマニウムダイオード、検波用ショットキーダイオード、方鉛鉱や紅亜鉛鉱による鉱石検波器などです。


もしダイオードの順方向電圧が高い場合でも、ダイオードにわずかなバイアス電流を流しておけば、検波は可能です。ただし、このために電池が必要になってしまいます。

この方法によれば一般的なシリコンダイオードでも検波が可能です。ただし接合容量が大きいものは高周波信号が通過してしまうので適しません。変わり種として、LEDやトランジスタのB-E間もこの方法で検波器として使うことができます。


上の回路では、イヤホンに対し、バイアスの際生じる直流電圧がかからないような回路構成となっていますが、簡単な実験なら左図のように接続しても問題はありません。
たわしダイオードラジオもこのようにバイアスをかけています。


以上の点を考慮して、メロディカード用ICの入力保護ダイオードにバイアスをかける方法を左図に示します。電池はメロディカードについていますからこれを利用します。バイアス抵抗はたわしダイオードのときに用いた鉛筆抵抗を採用します。
保護ダイオードは通常動作では逆バイアスになっていますから、ダイオードのカソード(K)は電池のプラス側につながります。今回はダイオードを順バイアスにしなければなりませんから電池は一旦抜き取って、プラスマイナスを逆にセットすることにします。ただし、ICの他の部分に逆電圧がかかると余計な電流を消費してしまいますので、紙によるセパレータを挟みます。このセパレータの紙に鉛筆で線を書き抵抗器とします。鉛筆の濃さはB以上にしてください。薄い鉛筆は、いくら強く書いても書いたところが削れてしまうばかりで、抵抗を低くすることができません。3〜5mmの幅で4〜5cmの太線を書き塗り潰します。このくらいあれば、消しゴムで消しながら調整できます。音が良く聞こえる状態に調整した鉛筆抵抗は200〜300[kΩ]となっていました。
セパレータとして使う紙には、メロディカードについている封筒を利用します。あまり厚い紙だと電池が収まらなくなりますし、薄いと破けてショートの原因となります。


次に出来上がった検波器を傘に取り付けます。

左図は接続の概要です。各部の接続の詳細を以下に示します。


まず、次の4つの線(テープ状になっている)を目玉クリップで挟み接続します。

・傘ループアンテナの外側の線
・傘のシャフトに巻いたアルミホイル(バリコン)
・ICの入力保護ダイオードの抵抗側(GND)
・メロディーカードを改造して作ったセラミックイヤホンの片方の線


ICの入力保護ダイオードのアノード側(A)の線を、傘のスライダーとストッパーの間に挟みます。
これにより傘のシャフト(バリコンの片方の電極)とループアンテナの内側の線にもつながったことになります。


ICの入力保護ダイオードのカソード側(K)の線を、セラミックイヤホンのもう一方の線の端にクリップで留めます。
この部分は基板上でバイアス用の電池のマイナス側に接続されています。


メロディーカードの部品を利用した傘ラジオの出来上がりです。
これなら、秋葉原に行かなくても100円ショップで材料が揃います。

試聴してみたところ、感度的にはゲルマニウムダイオードを用いた場合と同等でした。



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