1石トランジスタ増幅器をつなぐ


傘ラジオを実際に作られた方や見学の際に試聴された方の多くは、その姿がラジオとは程遠いことから、ラジオ放送が聞こえること自体大変不思議だと思われるようです。このラジオから聞こえるかすかな音で感動して頂けるのはとても嬉しいのですが、実はそうした感想を持たれるのは小学生か或いは年齢が上がってその保護者の世代であるのも事実です。
傘ラジオの本当のターゲットは、本校への入学を検討している中学生や本校の低学年の学生であったはずですが、そこからの反応は思わしくありません。実際に傘ラジオを聞かせても「音小さすぎだし!」の一言で終わってしまう場合もあります。これは、彼らの年齢になると、その興味がいろいろなハイテク製品(ゲーム機や携帯電話?)に移りはじめるからではないかと分析しています。

音が小さいのは事実ですし、本来は電子工学科で勉強することの導入として始めたことなので、傘ラジオで感動できないからといってそれを嘆いても仕方ありません。それならば、トランジスタ・アンプをつないで音を大きくして聞かせても良いのではないか、と考えました。現在のハイテクの中核をなす半導体技術、ダイオードからスタートしてトランジスタを勉強し、集積回路(IC)、LSIと進んでいかなければなりません。傘ラジオの音が小さいことも、トランジスタ1個がどれだけの能力を持っているかを体験させるのに好都合かも知れません。このような背景からここで紹介する「トランジスタ増幅器」作りが始まりました。
なお、「総合工学基礎T」における傘ラジオの資料ページ28に関連する説明があります。


回路図はこのようになります。(拡大できます)
素子数を少なくしたいので自己バイアスを採用しました。素子を減らす意味においては、クリスタルイヤホンをコレクタ抵抗に並列につないでも音は鳴ります。短時間の簡易な実験としてはそれもあり得るかも知れません。しかし、クリスタルイヤホンに直流を加えると発音体としての性能が十分発揮されませんし、その状態が長く続くとイヤホンの特性が劣化してしまいます。このため、出力側には電解コンデンサと抵抗を入れて直流をカットしています。
また、電源についてですが、以前は上の写真のように9[V]の乾電池(006P)で駆動していました。現在は真空管増幅器との差をより鮮明にするため、太陽電池を使用しています。

この増幅器製作は1年の前期に実施します。この段階ではハンダ付けの指導をしておりませんので、ネジ留めで組めるようにしました。
増幅器の実体配線図TrTbAmp.pdfをA4のラベル用紙に印刷し、段ボールに貼り付けてそれを台紙とします。
台紙にキリで穴を空け、ビス・ナットを取り付けます。ビスに部品の線を巻き付けナットで締め付けます。 ただし、トランジスタだけは、他の部品に比べ足が短いので、予めアースラグをハンダ付けしておきます。
ナットやワッシャの位置関係は左図(拡大できます)の様になっています。まず台紙にビスをナットで留めます。このとき台紙の両側にワッシャを挟んでおきます。ビスに部品のリード線を巻き付け更にもう一つのナットで留めます。このときもリード線を押さえつけやすくするためワッシャを挟んでおきます。
というわけでビス一本に対しナット2個、ワッシャ4枚が必要です。 これらは作業のやり易さのためこうなっているだけで、いくつかは省略可能です。
なお、ここに用いた部品については次のPDFファイルの1ページ目を御参照ください。
TrTbAmpParts.pdf


1石トランジスタ増幅器を取り付ける前の傘ラジオの状態です。


イヤホンを外して1石トランジスタ増幅器を挿入するだけです。
まずイヤホンの接続を一旦外します。 増幅器の入力端子から出ている2本のミノムシクリップ付きコードをイヤホンがつながっていた箇所に接続します。イヤホンのミノムシクリップを増幅器の出力につなぎます。これで接続完了です。


増幅器は傘の骨にワイヤー入りビニールひもなどで結びつけておきます。


さて、このトランジスタ増幅器付きの傘ラジオですが、再生検波方式に改造すると更に音が大きくなります。


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