イヤホン以外は日用品!! たわしダイオードラジオ



傘ゲルマラジオでは、ビニール傘やアルミホイルで電子部品を作りました。この発想を更に進めて、とことん日用品にこだわって作ったラジオがこれです。
イヤホン以外は日用品です。

ループアンテナ

ビニール傘にアルミホイルを巻いて作りました。
傘ラジオの経験から、25m程度の巻線が必要だとわかっていましたので、次のようにしてアルミホイル製の巻線を作りました。
普通に売られているアルミホイルは25cm×8mとなっています。ここから3本の帯を切り出せば24mの巻線を確保できます。
途中で切れてしまうと接続点で抵抗を持ちますから、ここでは完全に3本に切ってしまわず、端はつなげた状態で細長い帯を切り出しました。
幅4cmぐらいに切り出して、折り畳んで1.5cmから2cmの帯にしています。 このアルミ帯をビニール傘に慎重に巻きつけ、セロテープで止めています。

バリコン

この部分も、傘の中棒にポリ袋を巻いてその上にアルミホイルを巻くという、傘ラジオと同じ構造にしています。
ただし、外側に巻くアルミホイルには、ループアンテナの巻線(アルミの帯)の端の部分をそのまま巻きつけている点が異なります。


検波器

ここは、非常に苦労した部分です。 鉱石ラジオ時代に行われた鉱石の検討のまさに現代版と言えましょう。
日用品の範疇で整流特性を出す素材をあれこれ探したのですが、なかなか良いものが得られませんでした。
最終的に採用したのが、焼いたゴールドたわしと活性炭の組み合わせでした。しかし、これは順方向電圧が高いという欠点がありました。

この製作のこだわりは日用品なので、別にゲルマニュームダイオードの特性にこだわる必要もないかと思い直し、日用品で電池を作ってバイアスをかけることにしました。
電池は塩水に浸したティッシュペーパを活性炭とアルミではさんだものです。
これらダイオードと電池は、ストローの中に入れて固定しました。


バイアス抵抗はボール紙に濃い鉛筆をこすりつけ、消しゴムで消しながら良いバイアス点を探しています。
電池の電圧は1.1V、バイアス抵抗は約180kΩでした。

たわしダイオードの測定風景

日用品のどんな組み合わせが半導体的性質を持つのか、それを調べるため簡単なカーブトレーサを作りました。ウィーンブリッジ発振器と電流電圧変換回路をOP-Ampを用いて構成してます。
ダイオードの素材としては、トランジスタ技術1997年5月号で紹介されたカッターナイフの刃を最初に試しましたが、これは非線形ではあるものの原点対称のカーブとなり、バリスタのような特性しか得られませんでした。
アルミは半導体とのオーミックコンタクトに用いられているくらいですから期待が薄いので、次に着目したのは銅です。抗菌を謳っている製品に銅が使われているものがあります。その昔、亜酸化銅整流器というのも存在していますし、ここに狙いを定めました。
そうして行き着いたのがゴールドたわしです。これはいわゆるスチールたわしのようなものですが、抗菌を狙って銅と亜鉛の合金を素材に選んでいます。つまり、完全な銅ではなく真ちゅうなのですが、もしかすると亜鉛の方が整流に貢献しているのかもしれません。

たわしダイオードの整流特性

そのゴールドたわしをガスコンロで焼きます。火が直接あたるとすぐ融けてしまうので、焼き魚用の網付きプレートに乗せて焼きます。熱が伝わって表面のつやが無くなったところですばやく引き上げ、ゆっくり冷まします。
この色の変わった部分に冷蔵庫用脱臭剤の活性炭をあてるとごらんのような整流特性が得られます。
なお、オシロスコープの横軸は0.5V/div、縦軸は50μA/divとなっています。


市販部品の特性と比較する

このカーブトレーサは方鉛鉱などの鉱石の整流特性を見るのにも役立っていますが、ここでは参考までに、市販の部品を測定した場合の特性を示しておきます。


10kΩ抵抗

これは、横軸:0.5V/div、縦軸:50μA/divを確認する意味で載せました。

Siダイオード1S1588

さすがに本物は立ち上がりが鋭いですね。電流が小さい領域なので順方向電圧は0.55Vくらいとなっています。

Geダイオード1N60

こちらはさすがに検波用、順方向電圧が低いです。本物のありがたみがわかりますね。


たわしダイオードラジオの性能

このラジオは、ゲルマニュームダイオードの傘ラジオと比べると、少し性能は劣ります。音量がやや小さく感じます。でも、ここ八王子でもNHK第一、FENはしっかり聞こえました。

たわしダイオードラジオの今後

クリスタルイヤホンも自作できないか検討しています。小林健二氏の「ぼくらの鉱石ラジオ」(筑摩書房)にロッシェル塩の結晶生成の話があります。ロッシェル塩の元になる酒石酸は葡萄に含まれる成分です。実際にワイン工場では酒石酸が析出することがあるそうです。
ワインまたはワインビネガーからイヤホンが作れたら面白いでしょうね。でも、これには少々時間が掛かりそうです。
TOPページに戻る