家庭用TVを用いたV−Iカーブトレーサについて


はじめに

 日用品を利用した傘ラジオで、ダイオードも日用品で作れないかと検討していました。これは、鉱石検波器と同様に、いろいろな材料を接触させて整流特性を探す作業になります。ただでさえ同調の調整が心もとない傘ラジオですから、これにつないで音が出るところを探すのでは膨大な時間を浪費してしまいます。
 そこで、試料のV−I静特性を測ろうと考えました。本校にはカーブトレーサもありますが、ここ数年、モノ作り教育に力を入れていると宣伝しておりますので、あえて試作することにしました。精度は少々犠牲にしてでも、手軽に学生が作れるものを念頭において設計を開始しました。
 最初に出来上がったのは、ウィーンブリッジ発振器とOP−AmpのI−V変換回路を用いた回路です。これは、オシロスコープをX−Yモードに設定するだけで利用できますので、実験室の環境ではすぐにセットアップできます。この回路は学生に電子回路を学ばせるには良い材料となりました。しかし、オシロを使う点が気になっていました。

 気が向いたときサッと利用できる、極端に言えば家にいても使えるようなものが出来ると面白いのではないか。と言う訳で、試行錯誤の末、ここで紹介するV−Iカーブトレーサが出来上がりました。一番のヒントは、トランジスタ技術で紹介されたPICマイコンを用いたTVゲームの記事です。PICマイコンを使えば何とかTVに映せるのではと考えたのです。


回路の説明

 まず、回路図をご覧ください。PICを用いたTVゲームを参考にしたと書きましたが、最終的には同期信号を出すところのみが類似で、他は随分違ったものになりました。この回路では2つのD/Aコンバータを用いています。PICは主にD/Aコンバータ用の信号を出すのに使われているのみですので、実は参考にしたTVゲームのように高度なことをやっているわけではないのです。原理的には、PICでなくてもCMOSのカウンタICを使えば実現可能ですが、コスト的にはPICの方が安く上がりそうです。

 PICマイコンとしては、I/Oの数が沢山必要だったので、PIC16C57C−20/Pを使いました。PORTCとPORTBの先には抵抗ラダーによるD/Aコンバータを接続しています。このD/Aコンバータが縦軸と横軸の画像を決める重要な役目を果たしています。
 PORTC側のD/Aは、TV画面の縦軸上の電流を設定する役割があります。電流値はD/Aの出力電圧と抵抗VR1、R45、VR2、R52によって決まります。IC3の7番ピンには、この電流に対応する試料の電圧が出力されます。またこの電流は、水平走査期間中、一定となるようプログラムしてありますので、IC3の7番ピンの電圧も水平走査期間中は一定となります。

 一方PORTB側のD/Aは、水平走査期間中、リニアに電圧が上昇します。この電圧とIC3の7番ピンの電圧即ち試料の端子電圧をコンパレータで比較し、D/Aの電圧が試料の端子電圧を超えると画面の輝度が増すように回路を構成しています。これにより、試料のV−I(電圧−電流)特性曲線を境界として、輝度の濃淡で塗り分けられた画像が得られます。


 以上の原理でお判りの通り、実はこのカーブトレーサは、V−I特性を見ているのではなく、Iを与えてVを測りますので正確にはI−Vカーブトレーサです。従いまして、I−V特性が多価関数となるような、例えばエサキダイオードのような素子は測定できませんので注意が必要です。
 なお、PORTAからの信号は同期信号と目盛り代わりの濃淡信号となっています。軸や特性曲線が線として表示できればより良いのでしょうが、本機では濃淡の塗り分けとすることで回路構成が簡単になっていますので、これもひとつの解であると考えています。
 濃淡の塗りわけ区画は、横軸の1区画が1[V]に対応しています。すなわち、1[V/div]です。 縦軸は、1区画あたり0.1[mA]および1[mA]とし、スイッチで切り替えられるようにしています。つまり、0.1[mA/div]と1[mA/div]の2種が設定できます。


材 料

パーツリスト(Excelファイル)をご参照ください。
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