高輝度LEDに光を当ててバイアスをかけ検波に使う


高輝度LEDに光が当たっているとき、電子回路としてどのように考えればよいかを説明します。

これらの実験は、「家庭のTVで整流特性を観測」で紹介した、V−Iカーブトレーサを用いて行っています。先にこの画面の見方を説明します。

この写真は高輝度LEDに光を当てた時の電圧−電流特性です。 当てている光は、同じLEDを別に用意して、それに電流を流して発光させています。 LED同士をピッタリ近づけていますので、強い光が当たっているときのV−I特性と考えてよいでしょう。

上の写真を模式的に書くとこのようになります。


市松模様がグラフの軸を表していて、濃淡の境目が特性曲線を表しています。
したがって、左のような対応関係になります。


軸と曲線だけにしてみるとこのようになります。
上の市松模様では長方形一区画の横の長さが1[V]、縦の長さが0.1[mA]となっていますので、グラフの軸にメモリをプロットすると左のようになります。



高輝度LEDに光が当たっていない(室内光は当たっている)ときのV−I特性です。

この場合のグラフはこのようになります。




話を光を当てた場合に戻しましょう。

光を当てると、このようにV−I特性が電流軸のマイナス方向に下がることが確認されます。


この特性は左のように、縦横2本の直線(青の点線)で近似できることがわかります。

電流軸に平行な縦の線は定電圧源の特性です。
これに対し電圧軸に平行な横の線は定電流源の特性です。
光を当てたLEDは定電圧定電流電源のように振舞います。

冒頭の実測例では、1.5[V]以下の電圧で、10[μA]程度の逆方向電流が流れています。
言い換えると、1.5[V]以下の電圧では10[μA]の定電流源として働いています。 逆方向電流ですから、アノードから流出、カソードに流入の方向です。


この図は、被測定物である高輝度LEDにかかる電圧のプラス・マイナスと、LEDを流れる電流の向きを示したものです。

なお測定では、LEDのカソードを電位の基準とし、アノードに正負に変化するの電圧Vを加えています。 電流の向きは、アノードからカソードに向かう向き、即ちダイオードの順方向を、正としています。


さて、この図では、端子のプラス・マイナスと電流の関係から、グラフの第2象限と第4象限が発電機として回路を動かしている状態だとわかります。


前置きが長くなりましたが、以上を踏まえて、光を当てた高輝度LEDがなぜ自分自身にバイアスをかけることができるのかを説明しましょう。

LEDの両端には、同調回路のインダクタ(直流的には短絡)を経由して、クリスタルイヤホンがつながっています。現在入手できるクリスタルイヤホンは、実際には圧電セラミックによるものですから、コンデンサそのものです。測ってみると数十[nF]くらいの静電容量があります。
初期状態として静電容量の電荷がゼロの場合を考えます。このときコンデンサ(実際はイヤホン)の両端電圧はゼロ[V]ですから、LEDの両端電圧もゼロとなります。大事なのは、このとき、光の当たっているLEDは定電流源として働いている、ということです。この電流によってコンデンサには電荷が溜まり、これに合わせて電圧が上昇します。定電流が供給される間は時間に比例して上昇することでしょう。
コンデンサの電位が1.6[V](LEDによって異なる)に近づいてくると、定電圧源的な特性に切り替わってきます。その結果、LEDから供給される電流はゼロになります。電流がゼロであればコンデンサの充電も止まり電圧はその値で安定します。
実際に曇りの日の室内窓際における実測では1.43[V]くらいでした。但し、この電圧の測定は放送などに同調していない状態で行います。同調すると、包絡線検波で生じた直流電圧のため、少し押し下げられるからです。バイアス電圧はLEDの逆方向電流で生じますが、検波電圧はLEDの順方向電流で生じるため、電圧の極性が互いに逆なのです。 先ほどの、曇りの日の室内窓際の実験では、同調を取ると1.43[V]が1.37[V]くらいに下がりました。

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