バイアスしたダイオードによる検波と
コレクタ接地トランジスタ検波について


ここで紹介するトランジスタ検波ラジオの説明は、2005年に予告しておきながら、他のネタを優先させてほったらかしになっていたものです。本当に申し訳ありませんでした。今年(2007年)こそはやろうと思っていた矢先にLED検波を見つけてしまい、またしてもそちらを優先してしまったのですが、LED検波の実験はここでの検討に続くものですので今度こそ紹介致します。

発端はバイアスしたダイオードによる検波

傘ラジオは日用品でラジオを作ろうという目標でスタートしていますから、原型が生まれた2000年(H12年)の段階で検波器を日用品で実現する方法としてたわしダイオードラジオという構成に到達しています。このダイオードは台所用品であるゴールドたわしで実現できるのですが、順方向電圧がどうしても下げられず、結局、日用品で作った電池でバイアスをかけました。 これが2005年のメロディカードの保護ダイオードを用いたラジオにつながっていきます。このとき、汎用Siダイオードの1S1588やLED、トランジスタのB-E間などでも、検波できるか確かめました。実は、その延長上に、コレクタ接地型のトランジスタ検波回路があるのです。
まずは、ゲルマニウムダイオード1N60による傘ラジオの回路をスタートラインに置きます。

ここで、ダイオードをSiの汎用ダイオード1S1588に変更します。ダイオードを変えただけでは、順方向の立ち上がり電圧が高すぎ、ラジオは全く聞こえません。(注1)
そこで、左図のようにダイオードにバイアスを掛けわずかに電流を流してやります。これで、ゲルマニウムダイオードの場合と同じよう聞くことが出来ます。

ちなみにLEDを太陽電池代わりに使うとこのようになります。

Siダイオード1S1588をLEDに変更しても同様です。但し、電池はダイオードの順方向立ち上がり電圧以上の電圧を出すものが必要です。

NPNトランジスタのB-E間はダイオードになっていますので、ここを使っても全く同じことが出来ます。トランジスタを使っていますが回路的にはダイオードとしての働きしかしていません。

ところが、使っていなかったコレクタを接地すると、これは立派なトランジスタ回路となります。
上の回路では、包絡線検波回路の静電容量であるクリスタルイヤホンを充電する電流は、B-E間を流れてきた順方向のベース電流のみです。この回路では、クリスタルイヤホンを充電する電流は上記のベース電流にC-E間を流れてきたコレクタ電流が加わったエミッタ電流です。コレクタ電流はベース電流のhfe倍(この場合120〜240)ですから、エミッタ電流はコレクタ電流が支配的になります。
このエミッタ電流が上の回路と同程度の充電電流になるには、ベースにはその電流の約1/hfeの電流が流れれば十分です。これはベース側を見たインピーダンスがhfe倍になったことを意味します。これは言い換えると動作電流を絞ったエミッタホロワです。電流増幅率hfeは、ベース電流が非常に小さい値から大きな値まで広範囲に一定の値を示しますので、このような使い方が可能となります。

ベース側を見たインピーダンスが大きくなったことで、負荷が軽くなり同調回路のQが上がります。このため、コレクタを接地した段階で音は大きくなります。ここで更に、バイアスに使っているエミッタ抵抗を1/10に下げます。これにより、ベース側を見たインピーダンスが下がりますが、それでも十分大きな値ですのでQへの影響はわずかです。この回路構成でエミッタ抵抗を小さくすると、この抵抗を流れる電流が増えます。この電流は包絡線検波の放電に関わるもので、ここでは電流を増やすことで包絡線の追従を改善しています。これにより更に音が大きくなります。

この回路は基本がコレクタ接地のエミッタホロワですから、電圧の増幅はありません。しかし、入力の同調回路のQを改善し、静電容量の大きいクリスタルイヤホン(本当はセラミックイヤホン)のドライブ能力を改善するので、結果的に音が大きくなるのです。
エミッタ接地のトランジスタで増幅したものと比べても同程度かやや小さいくらいです。ところが選択度を比べると、こちらのほうが良好であることが確認できます。
それに何と言っても回路がシンプルです。このことから、ものづくりイベント等でトランジスタを一つ付け足したいときは、最近は迷わずこのタイプにしています。


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